2024 年 5 月 22 日

Russell 1000 Index® と S&P500 の違いを解き明かす

Russell 1000 と S&P 500 はともに米国株式市場のバロメーターとして位置づけられていますが、これらの株式指数は設計上で異なります。銘柄の組み入れと除外の点において、Russell 1000 はシンプルかつ透明性の高いメソドロジーを採用しているのに対し、S&P 500 はインデックス委員会が採用銘柄の決定を主導しています。そのため、S&P 500 の組み入れ時期が Russell 1000 より遅くなることも珍しくありません。

LSEG のリサーチが投資家に提供するメリットとは?

LSEG は、投資家のお客様に Russell 1000 と S&P インデックスのメソドロジーの違いをご理解いただき、目的と用途に応じて最適なインデックスを採用できるようサポートします。

Russell 1000 と S&P の違いのポイント

  • 委員会主導で銘柄組み入れ/除外されている S&P 500 よりも、Russell 1000 はシンプルで透明性の高いメソドロジーを採用
  • Russell 1000 は四半期ごとに IPO 銘柄を追加 (英語) (基準を満たす限り、毎年 6 月の年次入替に先立って新規上場米国株の組み入れが可能)

主なポイント:

  • メソドロジーなどの違いにより、Russell 1000 と S&P 500 で適格銘柄の組み入れスケジュールに違いが生じている。
  • 銘柄選定基準を満たしていればインデックスに追加できる Russell 1000 では、急成長銘柄が IPO 後数ヵ月で組み入れられることもある。
  • 2023 年の S&P500 の新規組み入れは 14 銘柄。数年前から上場している銘柄だけではなく、2023 年以前から業界をリードしてきた銘柄も存在する。
  • 下のグラフは、これらの違いがパフォーマンスにもたらす影響を示したもので、グラフをクリックすると、IPO の上場日と各インデックスへの組み入れ日が表示される。
  • 2023 年、S&P 500 には新規で 14 銘柄が組み入れられました。Blackstone、Airbnb、Lululemon、Uber はその代表格として、2023 年 9 月から 12 月にかけて構成銘柄入りを果たしています。しかし、これらは新規上場した銘柄という意味ではありません。最も古い IPO である Blackstone の上場日は 2007 年であるほか、2023 年以前から業界をリードしてきたような企業が含まれています。

    一方、Russell 1000 では、Blackstone、Airbnb、Lululemon、Uber はそれぞれ 2021 年、2022 年、2015 年、2019 年に組み入れが完了しています。特に Uber は、IPO から 2 ヵ月後の 2019 年 6 月の年次入替プロセスで Russell 1000 に追加され、組み入れ日から 2024 年 3 月末までの累積トータル・リターンは 74% を記録しました。その他、選定基準を満たす同様の銘柄が Russell 1000 へと組み入れられています。

    インデックスへの組み入れ日を考慮したパフォーマンス比較 - Russell 1000 対 S&P500

    銘柄名 上場日 Russell 1000 への組み入れ日 (A) S&P500 への組み入れ日 (B) (A) から 2024 年 3 月までの累積トータル・リターン (%)

    (B) から 2024 年 3 月までの累積トータル・リターン (%)

    Blackstone 2007 年 6 月 21 日 2021 年 6 月 28 日 2023 年 9 月 18 日 32.36% 14.86%
    Airbnb 2020 年 12 月 10 日 2022 年 6 月 27 日 2023 年 9 月 18 日 62.52% 15.72%
    Lululemon Athletica 2007 年 8 月 3 日 2015 年 6 月 29 日 2023 年 10 月 18 日 502.85% -3.69%
    Uber Technologies 2019 年 5 月 9 日 2019 年 7 月 1 日
    2023 年 12 月 18 日 73.91% 24.72%

    出所: FTSE Russell、S&P Dow Jones Indices、LSEG Workspace。2024 年 3 月 29 日時点のデータ。

  • 1. 委員会による決定とルールベースの選定

    S&P500 が S&P Dow Jones Indices の指数委員会によって銘柄構成されているのに対し、Russell 1000 はシンプルかつ透明性の高い組み入れルールを採用しています。

    • S&P500 の構成銘柄は、積極的な意思決定体制の下、時価総額、流動性、収益性、業界の代表性などさまざまな要素に基づいて随時選定され、市場に短期間で通知されます。通常、指数委員会が S&P500 に銘柄を組み入れるのは、その銘柄が米国株式市場で時価総額 500 位以内になってからのことであり、何年もの期間を要するのが一般的です。また、収益性の要件を設けているため、プラスの株式リターンをもたらす可能性のある成長企業の組み入れを妨げることがあります。
    • Russell 1000 の銘柄入替は、企業国籍、時価総額、流動性を考慮したルールに基づき、毎年 6 月に実施されます。インデックス・ルールは公開されており、リバランスのスケジュールも十分な期間を設けて市場に周知されます。

    2. 四半期ごとの IPO 銘柄追加を重視

    • S&P500 の断続的で主観的な組み入れプロセスは、新規公開株式 (IPO) の組み入れ方法にも適用されています。一方 Russell 1000 は、Russell 米国株インデックスの構築メソドロジーでも採用されている四半期ごとの IPO 組み入れルールに従い、3 ヵ月ごとに適格 IPO を追加しています。このプロセスでは、基準を満たしさえすれば 6 月の年次入替に先立って新規上場米国株を組み入れることも可能です。
    • Russell 1000には、S&P 500より10年も先にMicrosoft、Amazon、Netflix、Alphabet (Google)といったテック株が組み入れられていました。Amazon、Microsoft、Tesla は、Russell 1000 への組み入れ日から S&P500 への組み入れ日までの間に株価が 3000~17000% 上昇しています。
    • Tesla のケースで見られたように、S&P500 は、銘柄が最高値をつけた時、または米国株式市場で時価総額 500 位以内にランクインした後に組み入れを行うことが多いです。Tesla の S&P500 への組み入れは 2020 年 12 月に行われましたが、この時点での同社の株価は比較的高い水準にありました。しかし、S&P500 に組み入れられた後、Tesla は 2020 年 12 月から 2024 年 3 月の間に -18.8% のリターンを記録しています。
    • 過去 10 年間で、1,235 以上の IPO 銘柄が Russell 米国株インデックスに追加されています。

    上記で説明したメソドロジーの違いがもたらす影響は、Russell 1000 と S&P500 の要因分析にも反映されており、その詳細は LSEG の関連レポートで解説しています。