トレーディングのインサイト

これからの外国為替取引はデータ主導の意思決定が重要に

Bart Joris

Head of FX Sell-Side Trading, Refinitiv

外国為替取引を今後発展させていくために、自動化の推進は避けて通れません。企業がデータを活用して FX ワークフローの効率化、最良執行の促進、顧客サービスの向上を実現する上で、イノベーションと AI (人工知能) はどのように貢献できるのでしょうか。

  1. 外国為替市場は、株式など他の資産クラスと比べて市場規模が大きいため、自動化への動きが遅れています。
  2. 外国為替取引エコシステム全体でデータを効率的に活用することで、最良執行、透明性、ベンチマーキング、取引執行スピード向上につながると、市場参加者は認識しています。
  3. イノベーションと AI を用いてデータをインテリジェントに活用することで、個々の企業だけでなく、その顧客や外国為替市場全体にも良い影響を与えることができます。

外国為替市場における自動化の妥当性と適用状況を調査した FX Workspace Survey (2022 年に委託実施) によると、市場参加者共通の懸念事項としてデータ関連の問題が挙げられています。この調査は、将来の金融ワークフローのあり方、ワークフローの改善に利用できるソリューションや機能に主眼が置かれていました。

技術的ニーズや職能について正確に把握するため、全世界の 600 名を対象に定量的調査が実施されました。組織の種類や個々の職務はそれぞれ異なりますが、回答者はいずれも取引ワークフローの中で FX 関連のデータやアプリ、ツールを使用しているか、または担当していました。

データの重要性: プレトレードからポストトレードまで

高品質のデータにアクセスすることで、外国為替取引のワークフロー全体を強化できます。

取引前: 出来高の動きや市場が活発になるタイミングを把握。

取引中: 執行アルゴリズムや取引モデルにベンチマークやマーケット・インパクトに関するデータを入力し、取引執行結果を調整・最適化することで、取引判断の精度を向上。

取引後: 最良執行を含む取引後処理は、近年、規制当局や市場参加者の関心を集める。最適なツールとデータ管理で組み合わせ取引執行分析をすることで、各企業が執行の質を評価し、改善すべき分野を特定。細分化された外国為替市場は、取引コスト分析 (TCA) に不可欠で最適な価格ベンチマーク算出を可能にする包括的なマーケット・データの取得が課題。

日常業務の改善を第一に

金融データを活用する新しいツールや手法で最も改善されると考えられる業務を尋ねたところ、「取引のモニタリング」と「取引執行」を挙げた回答者がそれぞれ 43% と 35% でした。

全体として、このような時間がかかる日常業務を軽減するためには、新しいツールやシステムが最も必要であることが調査で示されました。全回答者の 53% が入力ミスやデータ・アクセスに関わるデータソース集約の遅延を、最も頻繁に発生する問題として挙げています。また遅延は、データの規制・コンプライアンスチェック時、および社内データとサードパーティのソース集約時にも生じ、別のプラットフォームからのデータ入力もエラー発生の可能性を高めています。

スマートなデータ、スマートな人材

FX Workspace Survey によると、営業部門の回答者の 59% が、新しいツールの導入で最も改善される業務として、「顧客とベニューの分析」を挙げています。一方、クオンツの回答者では、「ベンダーからのデータ調達」が全体の 75% を占めて 1 位でした。技術・IT 部門の回答者の 65% は「モデル、自動化、プロセスの開発」を挙げています。Fincoder (コーディングの知識を持つトレーダー/セールス) の台頭もまた、ツールや高品質のデータを求める明確な要因となっています。

しかし、データと AI 技術に人間のインサイトが融合した場合において、チームのパフォーマンスが向上します。とりわけトレーディング部門や営業部門では、AI と機械学習ツールを活用したマーケット・データやリファレンス・データに基づく最適な意思決定を下すことができるような、新しいスキルセットがますます重要になっています。

全調査回答者のうち、「専門家レベルのコーディング知識がある」と答えた割合はわずか 4% でした。当然ながら、技術・IT 部門では、回答者の 77% が専門家/上級者レベルの知識があると答えています。トレーダーの回答者の 38% も同様の回答でした。

調査回答者の 3 分の 2 以上が「自身のコーディングのスキルは中級以下である」と回答する一方、99% はコーディングのスキルが重要または極めて重要であると考えています。大半の組織は回答者のためにプログラミング言語のトレーニングを支援しているとみられ、その割合は回答者のチーム向けが 52%、組織内の他の従業員向けが 37% に上りました。これは、コーディングのニーズに応えて誰もが利用できるオープンなフレームワークを提供するようなワークフロー・ツールが必要であることを示しています。

外国為替取引ワークフロー: トレーディング・ワークフロー、マーケット・インサイト、データ、コンプライアンス・ツールを包括的にエンドツーエンドで活用できます。

優位性の獲得

導入は概して他の資産クラスより遅れているものの、自動化は外国為替市場において前向きな変化の要因と捉えられており、さまざまなレベルで、世界の多様な市場参加者や法域のニーズに対応しています。

データ量の増加や利益追求への圧力が利用の拡大を促しており、調査回答者の 44% は「自動化に関するスキルを高めることが期待されている」と回答しています。

最良執行のためにデータをインテリジェントに活用することで、企業は顧客に質の高いサービスを提供し、コンプライアンス要件を遵守することができます。結局のところ、データ、ワークフロー、テクノロジーを駆使して複雑な業務を遂行できるスタッフに最先端のツールを提供する企業が、競争優位性を獲得することになります。

Workspace for FX は、機械学習と AI をベースにして開発されています。これを通じて、リフィニティブのデータとクラウド・ベースの分析を自社データと組み合わせることにより、デスクトップや Excel、または Python Codebook のネイティブ環境において取引の意思決定を促進できます。要件に応じてカスタマイズ可能な Workspace は、さまざまな部門の市場参加者に各自のニーズに応じてデータを利用する可能性を提供し、外国為替取引エコシステム全体でユーザーに恩恵をもたらしています。

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