
森 敦仁
- FTSE Blossom World および FTSE Blossom World Sector Relative の提供開始: FTSE Russell が新たな 2 つのサステナブル投資インデックスにより、ESG インデックスの枠組みをグローバルに拡大。
- ESG スコアリングによる銘柄組み入れ: 企業は組み入れ対象となるためには、透明性とリスク管理を確保するルールに基づく、ESG スコア基準を満たさなければならない。
- 投資家の需要に対応: ESG 投資が世界的に広まる中、FTSE Blossom の拡大によって持続可能で信頼性の高い株式ポートフォリオを求める投資家をサポート。
FTSE Blossom は、FTSE Russell の日本におけるサステナブル株式投資のフラグシップ・インデックス・シリーズです。今回、FTSE Blossom のグローバル版を提供することになりました。
2025 年 1 月、FTSE Russell は、グローバル株式ユニバースで Blossom のメソドロジーを用いた 2 つの新たなインデックス・シリーズ、FTSE Blossom World インデックス・シリーズおよび FTSE Blossom World Sector Relative インデックス・シリーズの提供を開始しました。それぞれのインデックス・シリーズには、4 つの地域の株式インデックスが含まれています。
このような Blossom インデックス・ファミリーの拡大とその理由の詳細について、以下をお読みください。
日本の成功事例
2017 年以来、世界最大規模の年金積立金を有する日本の年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) は[1]、環境、社会、ガバナンス (ESG) 投資分野における重要なプレイヤーです。
「GPIF にとって、長期的な利益を確保していくことが何より重要です。このためには、投資先企業のガバナンスの改善に加え、環境・社会問題など負の外部性を最小化すること、つまり ESG (環境・社会・ガバナンス) の考慮が重要だと考えています」と、当時 GPIF の高橋則広理事長は述べていました。
GPIF は、FTSE Russell の ESG データ・モデルなど、データに基づくサステナビリティの枠組みにおいて平均を超えるパフォーマンスを達成した企業に恩恵があるよう、ESG スコアを銘柄選定プロセスに組み込んできました (以下参照)。
ESG スコアが高い企業は、サステナビリティのフラグシップ・インデックスに組み入れられ、投資フローを容易に増加させることができます (GPIF がこれらのインデックスに連動する形で大きな資金を運用しているため)。一方で、ESG スコアが低下した企業は、インデックスから除外される可能性があります。
ESG インデックスのパートナーを選定する際、GPIF は、時価総額加重型の市場ベンチマークに対する投資リスクとパフォーマンスも考慮します。
したがって、FTSE Russell が 2017 年に提供を開始した FTSE Blossom Japan Index については、業種ごとのウェイトを、日本の幅広く分散された株式市場のウェイトに合わせました。2022 年に提供を開始し、GPIF が新たなパッシブ・ファンドの親インデックスとして使用している FTSE Blossom Japan Sector Relative Index においても、セクターの中立性を確保するために、このアプローチを採用しています[2]。
2024 年 3 月末時点で、GPIF は 3 兆円 (198 億米ドル) 近くを 2 つの株式ポートフォリオ (それぞれが FTSE Blossom Japan Index と FTSE Blossom Japan Sector Relative Index に連動) へ配分していました[3]。
過去のパフォーマンスは将来のリターンを保証するものではありませんが、それらのインデックス・ファンドは現在、良好な投資パフォーマンスもあげています。2024 年 3 月末までに、FTSE Blossom Japan Index と FTSE Blossom Japan Sector Relative Index は、GPIF が利用するあらゆる日本株 ESG インデックスの中で、運用開始日以来、最も高い超過リターン (親インデックス比でそれぞれ年率 1.41% と 1.67%) を達成しました。
ESG インデックスの先駆けとなった FTSE Russell
FTSE Russell にとって、FTSE Blossom のインデックス・シリーズの設計原則は新しいものではありません。FTSE Russell は 2001 年に FTSE4Good インデックス・シリーズの提供を開始し、業界で初めてこうしたタイプの ESG インデックスを手がけています。
FTSE Blossom シリーズには、FTSE4Good Index と共通する次のような特長があります。
- 広範囲にわたる初期ユニバース (FTSE Russell の時価総額加重型ベンチマークの形で)
- 企業の公開情報を用いた包括的なデータ・モデルに基づく ESG スコア
- ESG パフォーマンスの改善を奨励するために、設定された閾値 (時間の経過とともに増加する可能性がある) を超える ESG スコア達成に基づいてインデックスに組み入れ
- 企業の ESG スコアが、設定された ESG 閾値を下回った場合はインデックスから除外
- 不要な銘柄入替 (ターンオーバー) を減らし、かつ、インデックスの構成銘柄企業や組み入れ可能性のある企業とのエンゲージメントを奨励するために、ESG スコア等における組み入れと除外の閾値間にバッファを設定 [4] (企業は当初の ESG 評価を見直し、該当する場合は追加の公開情報を提供する機会と期間を与えられる)
- ベースライン (ミニマムスタンダード) に基づく除外 — 特定のタイプの企業活動を行う企業はインデックスへの組み入れ対象外
ESG エクスポージャーおよびパフォーマンスのスコア算出法
FTSE Russell ESG データ・モデル (英語) では、企業の ESG エクスポージャーとパフォーマンスを 2 つの方法で評価します。すなわち、企業が外部環境に及ぼす影響と、ESG 関連リスクへの企業のリスク・エクスポージャーまたは耐性を評価しています。
このモデルによって投資家は、ESG の課題に対する企業のエクスポージャー (および管理) について多面的に理解できます。評価対象の企業は、基礎となる「ピラー」と「テーマ」へのエクスポージャーとスコアから算出される ESG 総合スコアを付与されます。ピラーとテーマは、各企業特有の事業状況に適用される 300 以上の個別の指標の評価に基づいて構成されています。
1 つの ESG スコア、3 本のピラー、14 のテーマ
出所:公表データに基づく。重要な法的開示については末尾をご覧ください。
FTSE Russell の ESG データ・モデルは、透明性の高いルールベースのスコアリング・メソドロジーを使用し、公開情報に基づいて、先進国および新興国市場の 8,000 以上の企業を包括的にカバーしています。
このモデルは ESG に関する課題への相対的なエクスポージャーに注目して重要性に焦点を当てています。国際基準 (気候関連財務情報開示タスクフォースや企業人権ベンチマークなど) を考慮しており、健全な社内外のガバナンス・システムによって支えられています。FTSE Russell は、広範な企業エンゲージメント・プログラムを運営し、ESG に関する情報開示の改善を後押ししています。
FTSE Blossom World Index および World Sector Relative Index の構築方法
新しい FTSE Blossom World Index への組み入れは、先進国株式については FTSE ESG 総合スコア 3.3 以上が条件となっています。新興国株式については、平均の ESG スコアが相対的に低いという事実を考慮し、総合スコア 2.9 以上を組み入れ条件としています。
インデックスの組み入れと除外の条件となるそれぞれの ESG スコアの間には「バッファ」があります。先進国市場の FTSE Blossom World Index については、ESG 総合スコアが 2.9 を下回る (または 1 つ以上の ESG テーマへのエクスポージャーが高いと評価され、対応するスコアがゼロの) 構成銘柄には同インデックス・シリーズから除外されるリスクがあります。また、新興国市場の FTSE Blossom World Index については、ESG スコアが 2.4 を下回る構成銘柄に、同じく除外のリスクがあります。
FTSE Blossom World インデックス・シリーズのその他の組み入れ基準には、原子力発電への追加開示、気候変動テーマスコアおよび高エクスポージャーのテーマにおける最低閾値 (スコア) があります (詳細はインデックス・ルールを参照)。
ESG に関する情報開示と、インデックスへの組み入れ可能性のある企業とのエンゲージメントを後押しするために、FTSE Blossom World Index の構成銘柄には、インデックスの適格基準を下回った場合、それを再び満たすことを目的とする 1 年の猶予期間が与えられますが、1 年後のインデックス見直しの際にまだこの基準が満たされていない場合は除外されます。
FTSE Blossom World Sector Relative インデックス・シリーズの構築方法は少し異なり、それぞれの ICB セクターにおいて、FTSE ESG スコアに基づいた ESG パフォーマンスが上位 50% 内の株式 (ESG スコアが 2.0 以上でなければならない) が組み入れられます。
FTSE Blossom World Sector Relative インデックス・シリーズでは、次の組み入れ基準も設けられています。すなわち、温室効果ガス排出量の評価がベンチマークの上位 10% 内の構成銘柄については、企業の気候トランジション状況を評価する Transition Pathway Initiative (TPI) の経営品質指標 (TPI MQ) スコアが 3 以上必要です。TPI MQ スコア (英語) は、温室効果ガス排出に関する企業のガバナンスの質と、低炭素への移行に関連するリスクと機会を評価し、トラッキングしています。
インデックス構築の最後のステップでは、業種またはセクターの中立性を確保します。FTSE Blossom World インデックス・シリーズの各インデックスは、親インデックスの ICB 業種ウェイトに関して中立性を確保するよう構築されています。FTSE Blossom World Sector Relative インデックス・シリーズについては、関連する親インデックスの ICB セクター・ウェイトに関して中立性が確保されます。
FTSE Blossom のインデックス構築ステップ
FTSE Blossom を拡大する理由
インデックス・プロバイダーとしての FTSE Russell の目標は、投資やスチュワードシップ、リスク管理のニーズに対応したベンチマークやデータを通じて、アセットクラス間でサステナブル投資アプローチの整合を図ることです。
ESG 株式ベンチマークは、サステナブル投資の推進に長年にわたり利用されてきた定評あるアプローチであり、FTSE Russell はその設計と管理のパイオニアです。2017 年の算出開始以来、FTSE Blossom の各種インデックスに連動する形で運用されている GPIF の資産規模は 200 億米ドル近くまで成長し、運用業界で地歩を確立しています。企業はこれらの日本株式インデックスに組み入れられることを常に歓迎しています。
一方で、ほとんどの投資家の ESG 要件と投資プロセスは現在グローバル化しています。FTSE Russell は、FTSE Blossom の設計の枠組みを世界の株式市場へ拡大することで、保有株式から得る ESG 考慮の改善を目指す投資家をサポートしています。しかも、厳格に、かつ透明性を確保し、株式市場全体と比べてリスク・エクスポージャーを抑えながらそれを行っています。
[1] 年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) - Top1000funds.com (英語)
[2] FTSE Russell が管理する業種分類ベンチマークは、11 業種と 45 セクターにおよぶ。
[3] GPIF_ESGReport_FY2023_E_02.pdf (英語)
[4] このバッファ・ルールは FTSE Blossom Japan および FTSE Blossom World インデックス・シリーズのみで適用され、Blossom Sector Relative インデックス・シリーズでは適用されない。
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