EU 法規

マネーロンダリング防止指令

EU マネーロンダリング防止指令 (AMLD) は、EU 加盟国が国内法の一環として実施することを目的に、欧州議会によって定期的に公布されています。

多くの規制対象企業に、取引関係における顧客デューデリジェンス要件 (顧客の本人確認と検証、疑わしい取引の監視と報告など) の遵守が求められます。過去 30 年にわたり、欧州連合 (EU) はマネーロンダリングやテロ資金供与と闘ってきた歴史があり、単一市場で AML 法令への一貫したアプローチを維持しつつ、金融システムを保護するための枠組みを定期的に改善してきました。 

EU マネーロンダリング防止指令 (AMLD) は、EU 加盟国が国内法の一環として実施することを目的に、欧州議会によって定期的に公布されます。そしてその都度、加盟国政府に対する規制義務の追加や更新が指令に盛り込まれています。

2015 年以降、EU は以下のマネーロンダリング防止指令 (AMLD) で構成される、現代的な規制枠組みを展開しています。 

第 6 次 AML 指令

第 6 次 AML 指令 (6AMLD) は、2020 年 12 月 3 日に発効し、2021 年 6 月 3 日までに規制対象企業へと適用されました。同指令は、EU におけるマネーロンダリング防止 (AML) 規則を強化し、規制対象企業に金融犯罪と闘う責任を強く課すことを目的としています。


 

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    第 6 次 AML 指令は、マネーロンダリングに対する前提犯罪の定義を加盟国間で調和させることを目的としています。マネーロンダリングの前提犯罪 22 項目には、サイバー犯罪と環境犯罪が新たに追加されています。 

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    第 6 次指令では、犯罪の主導者、幇助者、扇動者を新たに共犯者として定義し、「幇助および教唆」やセルフ・ロンダリングも犯罪を成立させる行為として認められるようになりました。 

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    6AMLD は、企業やパートナーシップのような法人に対しても刑罰を科すことができるよう、刑事責任の拡大を予定しています。今後、企業は犯罪行為に関与した従業員の行為について刑事責任を問われる可能性があります。 

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    マネーロンダリング犯罪の量刑が 4 年以上の禁固刑に引き上げられました。

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    6AMLD では、二重犯罪の問題を回避するため、その司法管轄区で違法であるか否かを問わず、一部の前提犯罪の犯罪化を EU 加盟国に義務付けています。

第 5 次 AML 指令

2020 年 1 月 10 日に発効した第 5 次マネーロンダリング防止指令 (5AMLD) は、反マネーロンダリングやテロ資金供与対策を改善するための透明性を高め、より多くの分野にわたって規制管理を強化することを目的としています。この指令の適用範囲は、仮想通貨取引所、不動産業者および賃貸仲介業者、美術商、投資による市民権または居住権を取得申請する個人などに拡大されています。

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    暗号資産サービス業者はより厳格な管理に直面します。取引所は、管轄地域の関連当局への登録、顧客デューデリジェンスの実施、疑わしい取引活動の報告 (必要な場合) を義務付けられます。金融情報機関 (FIU) には、仮想通貨の購入者の記録を保管することが義務付けられます。

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    複雑で不透明な企業構造の背後に潜む金融犯罪者を撲滅するため、実質的支配者 (UBO) の透明性確保にもフォーカスしています。各加盟国は、自国の UBO 登録簿を公開・維持することが義務付けられます。

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    各加盟国は、重要な公的地位を有すると見なされるすべての役職、役割、職務をまとめた実用的な PEP リストの作成・公表を義務付けられます。

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    第 5 次指令では、報告義務や規制執行の対象となる高額商品の範囲が拡大し、新たに美術品、石油、武器、貴金属、タバコ、(歴史的、文化的、考古学的) 工芸品などが追加されています。

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    高リスク国 (特に、AML 規制のレベルが標準以下であると EU に指定された国) と取引する場合、企業は厳格なデューデリジェンスの実施を義務付けられます。このデューデリジェンスは、資金の源泉調査を伴う場合があります。

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    プリペイドカードの利用限度額が 250 ユーロから 150 ユーロに引き下げられ、オンライン/リモート利用には 50 ユーロの限度額が適用されます。カードは EU 内で発行されたもののみ使用できます。ただし、EU の AML 規制と同等の法規を有する国で発行されたカードはこの限りではありません。

第 4 次 AML 指令

EU の第 4 次 AMLD は、マネーロンダリングおよびテロ資金供与に対する EU の防御体制を強化するとともに、EU の規制枠組みを金融活動作業部会 (FATF) の国際的なマネーロンダリング防止 (AML) 基準およびテロ資金供与対策 (CTF) 基準に合致させることを目的に設計されました。主な修正点は以下のとおりです。  

  • 実質的支配者へのフォーカスと顧客デューデリジェンスの強化 
  • 重要な公的地位を有する者 (PEP) の定義の国内適用 
  • 現金支払いの限度額を 1 万ユーロ (11,250 米ドル) に引き下げ 
  • ギャンブルの規制対象をカジノから業界全体に拡大 
  • エビデンスに基づく測定指標の導入を義務付け、リスクベース・アプローチを強化 

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