マネーロンダリングとは?
マネロン、資金洗浄とも言われ、違法な収益をロンダリング (洗浄) することで資金を出所不明にし、司法当局らの監視を逃れ、テロ組織や暴力団といった反社会的勢力の資金源などにする犯罪行為のことを言います。
マネーロンダリングが疑われる取引の代表例
- 通常と異なる口座の動き
- 現金による資産の取得、または不透明な事業構造
- 不正な値付けがされた商品の売買取引
- AML への規制や取締りが不十分な国やその国の外国PEP/PEPsおよびその関係者との取引
なぜ AML (アンチ・マネーロンダリング) が世界秩序の維持に貢献するのか?
近年、IMF (国際通貨基金) をはじめ、あらゆる国際機関は一丸となって「断固たるマネーロンダリング対策 (AML) とテロ資金供与対策 (CFT) で、金融業界の規律と安定性を高める」と強い意志を打ち出しています。もちろん、金融業界や事業会社、非営利団体などすべての組織団体においてこの問題意識は共有されています。
各国政府は反社会的勢力の違法資金を取り締まるための法規制を厳格化しており、日本でもテロ組織や暴力団によるマネーロンダリングに徹底的に対抗するため、「犯罪収益移転防止法 (犯収法) 」などを施行しています。こうして規制の網をかけることでAMLを徹底することで疑わしい取引を防ぎ、反社会的勢力に活動資金が流れないようにすることは、その活動を縮小・停止させるとされています。
1. マネーロンダリングに対する国際的な動き
アンチ・マネーロンダリングを実践するための国際機関である FATF (金融活動作業部会) は、定期的に加盟各国の取り組み状況の審査を行ない、その結果を発表しています。この活動により、各国当局はもちろんその監督下にある金融機関等がマネロン対策に真剣に取り組み続けるよう後押ししています。
上記に加え、数年来の議題となっているロシアや北朝鮮といった経済制裁の対象国を意識したマネロン対策の強化も続けられています。最近では、マネロンの温床になりやすいとされる暗号資産サービスのプロバイダーに対し、顧客のチェックと疑わしい取引の報告義務を課したり、貴金属や宝石商といった高級品の取引業者にも顧客チェックを義務付けたりする動きも広まっています。このように、マネロン対策が経済活動に直接影響する場面は今後も増えると予想されます。
2. 金融庁が定義するマネーロンダリングとは?
金融庁はマネーロンダリングについて、同庁ウェブサイトにて次のように定義しています。
「マネー・ローンダリングとは、違法な起源を偽装する目的で犯罪収益を仮装・隠匿することであり、例えば、麻薬譲渡人が取得した譲渡代金をあたかも正当な商品を譲渡した代金であるかのように装うため売買契約書を作成する行為、あるいは借入金、預り金等を装ってその旨の書類を作成し、あたかも正当な取引により得た資金であるかのように偽装する行為がその典型とされています」(出典:金融庁「マネーロンダリング対策」)
特に金融機関はマネロンに利用されるリスクが高いとされており、徹底した対策が求められています。例えば、金融庁が 2021 年 5 月 31 日に示した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に係る態勢整備の期限設定について」では、「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の 2 回目の改正を周知した上で、加盟金融機関に対し、「2024 年 3 月までにガイドラインで対応を求めている事項に対して適切かつ迅速に必要な対応を講じるよう」求め、検査やモニタリングを通じて実施状況を確認していくほか、仮にマネロン・テロ資金供与対策に問題があると認められた場合には法令に基づく対応を行なう旨を強調しています。
一方、テロ組織や暴力団などの反社会的勢力は、フロント企業やダミー企業などを“駆使”することでマネロンの方法を複雑化させ、発覚を逃れようと躍起になっており、従来マネロンの典型例とされていた麻薬や違法薬物の違法売買のみならず、土地や有価証券、貴金属類のほか、精巧な模造品や模倣品を介した資金洗浄を行なうケースも増えています。
中でも模造品や模倣品については、一般生活者までもが「本物だ」と誤認して購入してしまい、意図せずマネロンに関わってしまうケースも報告されています。
そうしたこともあり、警察庁刑事局組織犯罪対策部の犯罪収益移転防止対策室 (JAFIC) は、疑わしい取引の届出をするよう事業者に促していますが、反社組織との “イタチごっこ” の状態が続いているのも事実です。
3. マネーロンダリングに対する日本の動き
日本でもテロ組織や暴力団によるマネーロンダリングに徹底的に対抗するため、規制強化が進んでいます。
しかし、FATF第4次対日相互審査報告書によると、いわゆるメガバンクのマネロン対策は評価できるものの、地銀や信用組合・信用金庫のほか、新たに参入してきたスマホ決済業者などの対応は不十分で、「日本はいまだマネーロンダリングができる余地がある国である」との厳しい評価が下っています。
そのため、金融機関やあらゆる企業、団体には、独自の基準をもとにリスクの特定や評価、対抗措置を進める「リスクベースのアプローチ(リスクベースアプローチ)」での対策が強く求められています。
一方で、近年はマネーロンダリングに犯罪組織がどのように関わっているか、その組織の実態はどのようなものかといった情報共有が進んでおり、この情報を活用してデューデリジェンスやスクリーニングを徹底することでリスクを検知できる環境が整いつつあります。このような情報や過去の知見、事例などを参考にマネロン対策を徹底し、「無防備なまま犯罪に巻き込まれ、制裁処分や罰金等を課せられ、さらに株主・市場から厳しい評価を受ける」ということがないよう継続的なリスク管理が期待されています。
4. 企業に求められるマネロン対策
日本企業にとってのマネロンリスクは、ビジネス環境が大きく変わる今日、これまでになく深刻になっているといえます。例えば、海外の製造工場との取引や原材料等の調達先企業について、取引開始時に企業実態や役員などへのデューデリジェンスを徹底したとしても、気づかないうちにその実態が変化しており、結果としてその取引関係がマネロンの温床になってしまうといった事案はいくつも報じられています。
企業はこうしたリスクを回避するためにも、取引先が「ハイリスク地域」に該当しないか、その役員や関係者の素性はどのようなものか、といった過去のマネロン事案やそこから得られた知見を踏まえた注意点に着目し、最新の情報をもとにした定期的なスクリーニングを続けていく必要があります。
疑わしい取引や架空請求がなぜ甚大な損失を与える企業リスクになるのか?
企業にとって、疑わしい取引や不正口座取引に加担したことが当局に発覚した場合、短期的には、莫大な制裁金や制裁措置を受けるおそれがあります。さらに、当局への協力のために人的リソースが投入されることによるビジネス停滞のリスクも考えなくてはなりません。
加えて、そのことが公知の事実となった場合には、企業価値やブランドが毀損されるようなレピュテーション (風評) リスクの増大、ステイクホルダーへの説明責任などのリソース確保とその遂行にも迫られます。当然、これらを乗り越えたあとも、規制当局による継続的な監視対象となることは避けられません。そのため、マネロンが疑われる取引の代表例等の情報には常に高い感度を保つことが求められます。
マネーロンダリングの仕組み
マネーロンダリングの仕組みは非常に複雑です。以前よりマネロンを防止するための役割を果たしてきた金融機関は、マネロンの「疑わしい取引」の例として、次の 1〜6 のようなケースを強く警戒しています。この内容は企業におけるマネロン対策を検討する上でも重要です。
マネロン対策としての KYC・UBO チェック・デューデリジェンス・スクリーニング
FATF 審査では、マネロン対策の機動性やリスク管理の実践が問われる
今後も FATF 審査をクリアし続けることはもちろん、マネロン対策を有効に保ち続ける意味でも、マネーロンダリングの仕組みを理解し、それが発生する度合いを推測した上で、リスクを未然に防ぐための対抗策として、KYC や UBO チェック、デューデリジェンス、そして継続的なスクリーニングによるリスク管理が欠かせません。
これらの取り組みは、日本の金融や経済における健全性やコンプライアンスレベルの高さ、正当性、信頼性を国内外に示すことに繋がると言えます。
LSEG のマネー・ロンダリング対策 (AML対応) ソリューション
LSEG では、マネー・ロンダリング対策 (AML対応) によるコンプライアンス遵守と企業のリスクマネジメントを実現するため、以下のソリューション提案しています。
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企業が抱えるコンプライアンス・リスク
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